【データ】金利の動向(1)米金利

組織変更終了にともない一時休止していたデータ提供について、こっそりと再開した。
(日本の物価連動債利回りについては権利の関係から継続利用せず、新たに計算し直している。)
長らく金利についてのコメントをしていないが、これを機会にいくつかクローズアップしておこう。

米名目金利

米金利は近年確かに長短ともに上昇したが、長い目で見るとそれほど高いとも言えない。
異常な低金利時代が終わったに過ぎない可能性も残っているように見える。

米国債の流通利回り
米国債の流通利回り

イールドカーブは複数年の長短逆転の後、再逆転した。
また、今回の利上げサイクルはかなり急激なものだった。
いつもならここで景気後退となるのだが、まだそうなっていない。

米国の2年10年スプレッド
米国の2年10年スプレッド

こうした長い長短逆転はボルカー・ショック時以来のこと。
結局は景気後退になるのか、それとも例外になるのか。
例外となるなら、それを引き起こしたのは何か。
インフレか、長年の拡張的財政政策か。
今はまだ予見が難しい。

米物価連動債利回り

米実質金利は2%近傍にある。
これは米中期・長期の物価連動債に投資すれば、それぐらいの価値の増加が得られるということ。
また、名目債であっても、インフレでサプライズがない限り、それぐらいの価値の増加が見込まれるということ。

米物価連動債利回り
米物価連動債利回り

米国のブレークイーブン・インフレ率を見ると、極めて安定している点に驚くのではないか。
大きな危機があると一時的なデフレ懸念から急落するが、そう遠くないうちに2%近傍に回復していく。

米国のブレークイーブン・インフレ率(BEI)
米国のブレークイーブン・インフレ率(BEI)

債券市場の期待インフレが安定しているため、今後10年のBEIを前5年・後5年に分けてもほとんど差が生じていない。
トランプ関税がほぼ確実であるのに、ここまで安定しているのは少々不思議でもある。

米国の5年先から5年間のブレークイーブン・インフレ率
米国の5年先から5年間のブレークイーブン・インフレ率

本来、債券市場はかなり賢い予想者のように思われてきた。
それにしては、近年の社会・経済情勢の地殻変動的な変化と比べると、まだまだ穏やかな変動にとどまっている。
この織り込みが正しいのかどうか、今後の展開に要注意だろう。

次回は日本の金利を概観する。