現金はゴミか?(1)米ドルの待機資金はどこに置いておけばいい?
筆者もすっかり個人投資家になり、自由な投資を楽しめるようになった。
そこで1つ、最近の悩みを書いておこう。
月並みな悩みだが、現金を持っていてよいのか、だ。
まずは、米ドル現金、もう少し広義に捉えて、ドル建て短期債券について、つらつら雑感を述べよう。
米長期債は買いにくい
米国株に投資されている読者の中には、史上最高値を更新してきた株価に警戒感を抱く人も多いだろう。
トランプ関税や地政学的リスクなど、多くの不確実性やリスクが存在する中で、いくらなんでも史上最高値は出来すぎなのではないか。
むろん強気派からすれば《だからこそ株を買う》と言う人もいるのかもしれないが、そうした強気はどれほどの知的判断によるものか。
上がる可能性もあるが、下がる可能性もあるという姿勢が、理論に忠実な姿勢というものだろう。
下がる可能性があるなら、その時こそ本当の買い場だと考える人も多いはず。
長い強気相場でそれを待ち焦がれてきた投資家も多いのではないか。
そうした投資家は下げに備えて、現金またはもう少し長めの債券で機をうかがってきたのだろう。
ところが、現在、本当か間違いかわからないが、とにかく世の中ではインフレへの心配が募っている。
米国では「大きな美しい法案」が可決された。
これでインフレに逆戻りするかどうかはわからないが、少なくともさらなる財政悪化というインフレ要因は仮定から現実のものとなった。
だから、年金・保険といった投資主体を除けば、なかなか長期債には前向きになれない。
米ドルはゴミではなくなった
残るのが現金等価物となるが、現在、米ドルを(広義)現金に置いておいていいのだろうか。
結論から言って、現在、米ドル現金はゴミではない。
日本の証券会社でも多く扱っている米ドル建てMMFの利回りは3.5-4.0%であり、足下のインフレ(5月で総合2.4%、コア2.8%)を上回っている。
FRBがFF金利を4.25-4.50%に設定していることが大きいのだろう。
つまり、MMF(例えば3.8%としよう)に置いておいてもインフレ(総合2.4%としよう)調整後で1.4%も増価することになる。
(もちろん円建てで見れば増価するとは限らないが、それは為替ヘッジなし外貨投資の宿命だ。
どうしても円建てで考えたい人は為替ヘッジをすればよい。
ここではドルの実質ベースの価値で議論しよう。)
さて、ではもう少し長めの債券ならどうだろう。
ここでの論点は2つあろう。
- 経済・市場が急変すれば米国が量的緩和に逆戻りするかもしれない。その場合、長めの債券が恩恵を受ける。
- 米インフレが再燃するかもしれない。その場合、長期債は打撃を受ける。
これらは名目金利とインフレ、分解して考えるなら実質金利とインフレによる影響に注目した論点だ。
金利の上下に対し、債券というカテゴリーで対処するには変動金利債という選択肢がある。
しかし、変動金利債のデュレーションは短いから、事実上、短期債への投資のバリエーションに過ぎない。
もう少し長いデュレーションの債券投資で実質金利の変動に対処するのは容易ではない。
そして、実質金利は金融政策(短期ならFF金利、長期なら量的緩和)に大きく左右される。
(次ページ: 物価連動債という選択肢)