【解説】「最後のひと上げ」予想

米景気拡大期が長く続くにしたがい、景気後退期の到来を心配する人が増えてくる。
と同時に「最後のひと上げ」が来るとの期待も高まっている。

市場では明示的に、あるいは暗示的にこのテーマに触れる人が多い。
なにしろ景気サイクルに1回の大相場だ。
この「最後のひと上げ」について概略を復習しておこう。

最初にスポット・ライトを浴びたのは1月下旬、レイ・ダリオ氏がこう話した時だ。

市場は噴き上がる。
もしもキャッシュを抱えてたままなら、後でひどく愚かだったと感じることになる。

当時、米市場は昨年末に通過した減税法案等への期待から急騰していた時期だった。
それなのにダリオ氏は「噴き上がる」と話した。
多くの人が、さらにそこから上昇するのかと意外な印象を持ったはずだ。
しかし、過去の事例をあたる限り、景気サイクルの終期で良好な米国株のパフォーマンスが得られるのは事実である。

景気サイクル終期に起こること

景気サイクルの終期で起こるのはこうだ:
景気は過熱気味になる。
中央銀行は慎重で、利上げはまだ進んでいない。
景気はサイクルで最高、金融政策はまだ緩和的だから、景気と金融緩和の温度差が広がりやすい。
株価は経済より金融緩和の影響を即時に受けやすいため上昇する。

このひと上げの後、中央銀行が金融を引き締めすぎると経済が景気後退に向かい、資産価格が急落してしまう。

ちなみに1月下旬、最初にダリオ氏が「市場は噴き上げる」と話した直後から米市場は調整入りした。
ダリオ氏の発言はポジション・トークとしては対象範囲が広すぎるから、その時点では信じていたのだろう。
実際、その後、母校ハーバード大学でローレンス・サマーズ元財務長官からインタビューを受けた時も今はまだプレ・バブルと話している。
もっとも、足元のポジションを言えば、1月下旬の下落時から株式へのエクスポージャーを減らし、最近では株式についてネットでショートしていると伝えられている。

同調する人は多い

こうした「最後のひと上げ」予想に同調する人は少なくない。

また、足元の景気がまだ強いとの指摘も少なくない。
景気拡大が長く続いたから景気後退が近いというロジックは適切でないとの指摘もその通りだろう。

不況を恐れるのは健全な姿勢だが、市場はそれとは異なった挙動を示す。
「市場は心配の壁を登る」と言われるとおりだ。

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