佐藤元彦氏:なぜ30・40年債まで買うのか

理想的なイールド・カーブ

では、佐藤氏のYCCへの提言は早すぎたのだろうか。
そうではないだろう。
某与党の総裁選が終わり、現総裁の最後の任期が始まった。
米大統領の例から類推すればわかるとおり、明確にエンドが決まった指導者は最後にレイム・ダック化を避けられない。
あと1回か2回選挙が終われば、この変化が始まるのではないか。
そして、それとともに反動への圧力も大きくなってくるのだろう。

黒田総裁の政策には期待に働きかける側面が大きいから、金融政策正常化をアナウンスするその時点まで緩和継続との方針が繰り返されるのだろう。
しかし、そう遠くない将来その時点がやってくるかもしれない。
それまでに日銀は理想のイールド・カーブを短期から超長期まで思い描く必要があろう。
(公表しないでも、すでに持っているのかもしれない。
しかし、環境は刻一刻と変化し、理想もそれに応じて変化する。)
そして、投資家もそれを予想する努力を始めるのだろう。

なぜ30年債・40年債まで買うのか

最後に佐藤氏の問いかけに戻ろう。
日銀が超長期債も買い入れているのはなぜか。

「賢明なる読者の方々に筆者がどのように考えているかはもはや明言するまでもないであろう。」

残念なことに、不明ゆえに筆者は佐藤氏の考えがしかとはわからなかった。
もちろん、10年をペッグするために買う場合もあろうし、資産効果もあるのだろう。
でも、佐藤氏の論調を見る限り、これらにとどまるようにも思えない。
脱法的なヘリコプター・マネー、財政ファイナンス、マネタイゼーションがすでに進行していることを憂えておられるのだろうか。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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