「今回は違う」vs「歴史は韻を踏む」

インフレ上昇の現在どうして名目株価に注目するのだろう。

インフレなのに名目に注目するワケ

投資の価値を測るのに重要なのはもちろんインフレ調整後の実質指数だ。
しかし、そこであえて名目に注目するのには理由がある。
投資家の気持ちを想像してみよう。

これまでそこそこ景気も良かったし、株も上がってきた。
でも、そろそろ景気や株価が陰ってきてもおかしくない。
持株を少し売っておきたいが、かわりに何にしておけばいいだろう。

これまではディスインフレだったから、待機資金は現預金でよかった。
でも、インフレが高まると、現預金、特に現金は目減りしてしまう。
債券は利回りが上がってきたが、足元のインフレには届かない。
また、債券にも価格変動の可能性がある。

待機資金について投資家はこんな悩みを持っているだろう。
強烈な金融緩和が継続されていない国なら債券が有力な候補になろうが、確定利回り商品ではインフレに大負けする日本のような市場では難しい。

金融抑圧を恨みつつ、投資家は考える。

現預金なら、名目の価格は横ばい(+わずかの利息)だ。
現預金は確実にインフレに負けてしまうが、株式ならどれぐらい負けるのか。

そこで見るのが名目株価になる。
米市場の上記3つの期間では、名目株価の下落はさほど大きくなかった。
(インフレ的株価調整とでも呼ぼうか。)
また、比較的短期間で回復している。
そこで、こう考えるかもしれない。

仮に名目株価が横ばいぐらいですむなら、株式にしておけばいい。

どういう意思決定が正しいという話ではない。
(今回はインフレが2桁にはなっていないので、上記3例とは異なるとの考えもありうる。)
ただ、こうした考え・割り切りもあながち間違っていないということだ。
そして、それこそが足下の株高の一因になっているように思える。

こうした投資家心理に共感できるなら、特に長期投資家について、将来の株安を待つ意味は小さいのかもしれない。