【輪郭】10年経つとみんな忘れ、易きに流れる

日銀が2016年に長期金利ペッグを導入したのは、長期金利に上限を設けるためではなく、実は真逆の目的だった。

日銀は総括的な検証の半年あまり前、2016年2月よりマイナス金利政策を導入した。
金融緩和をさらに強化するためだった。
しかし、そこで予想外のことが起こった。
イールドカーブがブル・フラット化し、10年ゾーンまでマイナス圏に沈んだのである。
このフラットなカーブが、信用創造へのインセンティブを削ぎ、政策の効果を低下させることが心配されるようになった。
つまり、日銀が長期金利ペッグを導入した目的は長期金利を下げることではなく、逆に長期金利を持ち上げることにあった。
実際、長期金利をペッグする中で、ステルス・テーパリングと呼ばれる量的緩和の鈍化が実現したのだ。

当時筆者は、この目的のための長期金利ペッグについて
「金利を引き上げるプロセスでの中長期金利ターゲティングは比較的安全な方法だ。」
と書いている。

一方、経済またはインフレが上向いてくれば、長期金利には自律的な上昇圧力がかかる。
多くの人は、同ペッグの目的を忘れ、いつしか長期金利上昇にシーリングを設ける、つまり金融抑圧の道具と考えるようになった。
真逆の目的のために使うようになり、それが当たり前のように受け入れられてしまったようだ。
冬寒いからエアコンで暖房を入れたのに、酷暑の夏になっても暖房を入れ続けるような危険さを孕んでいる。

何度も言ってきたことだが、拡張的な金融・財政政策を採り続ければ、国債や通貨の価値は下がる。
価値を下げたくないために国債を買い支えれば、国債の名目価格を支えることはできるだろう。
しかし、価値の下落は止まらない。
価値と名目価格の間に乖離が生じ、それが通貨単位 円の価値を下げる、つまり円安やインフレを引き起こす。
価値が下がるものを無理に支えようとすると、物差しの方に歪みが寄ってしまうのである。

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