【書評】全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦

本コラムでも何度か取り上げた人気コメンテーター ジム・クレイマー氏の本。
少し前の本になるが、内容は陳腐化しておらず、紹介しておこう。

くだけたタイトルになっているが、日本のハウツー本とは違い、中身は濃密だ。
読みやすい文体ながら、文字のぎっしり詰まった400ページを超える本に仕上がっている。

序盤、クレイマー氏は、投資の邪魔をする「疫病神」のような固定観念を3つ挙げる:
・株式は買い持ちすべし。
・トレーディングは間違い。
・投機は悪の極み。
こうした疫病神を排せと言っている。
あたかもバフェットイズムに反するかのような敵愾心である。
弊社も事業概要の中で「ロング・オンリーの息の長い保有」を挙げているから、きっと疫病神なのだろう。
ただし、クレイマー氏が言いたいのは、長期保有の一神教はダメということなのだと思う。
本書全体を通して、何事にも柔軟にといったメッセージが伝わってくる。

もう一つ面白いところを紹介するなら「トレーディングのための10のルール」だ。
・トレーディングを長期投資を混同するな
・損切りは遅れるほど損が大きくなる
・含み損も立派な損失(損切れ)
 (以下略)
これらについて、クレイマー氏の経験に沿って説明されている。

ちなみに「長期投資のための25のルール」というのもあるが、紙面の都合から1つだけ紹介する。

ブルもベアもそれなりに成功するが、『ピッグ』は身を滅ぼす

ブルは強気派、ベアは弱気派は周知のとおり。
クレイマー氏の言う「ピッグ」とは何か。

もしあなたが大儲けした時にも、とりあえず売って儲けを実現しようとしない欲張り豚なら、大火傷するだろう。

面白い視点ではあるが、長期投資家の中には同意しない人も多いはずだ。
長期投資家の中には、バフェット氏のコカ・コーラ投資のように、キャピタル・ゲインさえ気にかけない人がいる。
そうした人たちにとって、含み損のない長期投資は利回りのいい預金のようなものだ。
トレーダー出身のクレイマー氏には、そうした考えは許容できないのだろう。