【書評】金利と経済 – 高まるリスクと残された処方箋

日本の金融・財政政策は以前から全開だった

最後に、投資家にとって極めて重要な一節を紹介しよう。
それは、リーマン危機の素地を作ったとして批判を浴びたアラン・グリーンスパン元FRB議長の日本感だ。
「失われた10年」を費やしても復活できない日本を見て、グリーンスパンはデフレの脅威に震える。

「この時期、日本はいってみれば、通貨供給の蛇口を全開にしている。
短期金利をゼロにまで引き下げている。
財政政策を思い切り緩和し、巨額の財政赤字を出している」

思えば、日本はあの時期すでに金融・財政政策を全開にしていたのだ。
そう緩和のマエストロが言っている。
その後、限界効用が低減しきったように見えるのに、いまだ拡張的な金融・財政政策を望む声は尽きない。

バブル回避よりデフレ回避

政治家が財政拡大を望むのは私利私欲のためもあるのだろうが、中央銀行が金融緩和に傾くのは恐れのためであろうか。
引き締めて叱られるよりは、緩和して叱られる方がましなのだろう。

「デフレのリスクに比べれば、バブル発生を相対的に小さなリスクと捉え、デフレから免れるために、バブル発生のリスクに目をつぶる低金利政策に踏み込んでいった。
そして、バブルが発生するリスクをいとわない政策のもとで、実勢に米国では住宅価格バブルが発生することになる。」

その結果は「100年に一度の危機」であり、非伝統的金融政策という底なし沼であった。
マエストロのマエストロたるところは、バブル崩壊の直前までにFRB議長の席をベン・バーナンキに譲ったところだろう。