試されるイールド・カーブ・コントロール

上昇期待が金利を上限に貼りつける

金利上昇期待が発生し継続すると、長期金利は日銀の許容する幅の上限に張り付くことになる。
これは、事実上のYCCの敗北ととられかねない。
かつて日銀自身が唱えていた純粋期待仮説どおり、長期金利を持続的にコントロールすることは至難の業であることが証明されてしまう。
そして、日銀は貴重な政策手段を失うことになる。

だからこそ、日銀はたいして動くことはできない。
彼らの発言が本心かどうかは別として、YCCを実施する間は、今後

  • 10年程度は短期金利は上昇させない
  • 5-7年程度は中期金利(3-5年)も上昇させない

といったスタンスを継続するはずだ。

逆に、日銀がそうしなかった場合、市場は大きく動く可能性がある。
仮に日銀が、中期的には金利は上がるかもしれないと匂わせれば、市場は徐々にYCCを突き崩そうと浸食していくだろう。

為替へのインプリケーション

仮にそうなった場合、為替市場への影響は一義的には円高要因だろう。
しかし、仮に、円金利上昇がドル金利上昇を招くようなら結果はわからなくなる
ドル金利の上げ足が速ければドル高かもしれないし、世界的金利上昇を招けば景気を冷やして円高かもしれない。

何度も言って恐縮だが、将来の資産価格や為替を決めるのは現在の金利ではない。
将来の金利、つまりフォワード金利や先物の金利であることを忘れてはいけない。

ちなみに、金利低下をもたらす他の要因には不況やリスク資産の価格下落などが考えられる。
こうなれば、日銀はYCCを維持できるのだが、その場合は、現水準が状況に対処するのに十分な金融緩和度合いではなくなっているだろう。
つまり、YCCは維持できるが、問題は改善しない。
それどころか、YCCの副作用と考えられている問題点はより深刻になっているはずだ。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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