【書評】インデックス投資は勝者のゲーム

パッシブ運用ファンドの草分けJack Bogle氏による投資に勝つための秘訣(原書第10版の訳書)。
日頃The Financial Pointerでも紹介しているボーグル氏の考えが系統だって書かれている。

サブタイトルは「株式市場から利益を得る常識的方法」。
本書のテーマはタイトル、サブタイトルそのものである。
運の要素に頼ることなく普通の人が投資によって経済的利益を得る方法が書かれている。
それがインデックス投資なのだ。

ボーグル氏は端的にその理由を説明している。
資本主義経済は(長期的には)経済成長を遂げてきた。

資本主義とは富を生み出す、所有者にとっては非ゼロサムゲームなのである。
長期的な株式投資は、勝者のゲームなのだ。

企業収益が長期的成長を続ける経済において、株式市場は全体においてプラスのリターンをもたらしてくれる。
もちろん、この命題は個別銘柄や投資タイミングによってデコボコがある。
しかし、そのデコボコを持続的に言い当て、他の投資家をアウトパフォームするのはほぼ不可能だ。

投資にかかるコストを差し引く前では、市場に勝とうとすることはゼロサムゲームでしかないのだ。

つまり、株式市場全体はポジティブ・サム・ゲームだが、その全体に勝とうとしても(コスト差し引き前で)ゼロ・サムでしかない。
神がかった投資家であればゼロ・サム・ゲームで勝ち続けることもできるのだろうが、一般の投資家には不可能と考えた方がいい。
何しろ伝説となった投資家であっても、何度も失敗を繰り返している。

状況は投資コストの存在によってさらに不利になる。
投資コストとは、各種手数料、ビッド/オファー・スプレッド、調査にかかる費用・時間などを考えればいい。

投資にかかるコストを差し引いたあとでは、市場に勝とうとすることは敗者のゲームなのである。

これまでの3つの命題を読み合わせれば、ある結論に達する。
株式市場はそもそも全体として勝者のゲームなので、そこに勝利を求めるべきだ。
市場に(銘柄選び・タイミング)で勝とうとすべきでない。
敵は投資コストであり、それを最小化する低コストのインデックス投資を選択すべきである。

これは、米国株という山谷ありながらも趨勢的に上昇を続けてきた市場について言える命題である。
そのまま日本株に適用すべきではない。
日本株はバブル崩壊後、四半世紀以上にわたって債券に対して十分なリスク・プレミアムを提供してこなかったからだ。
日本株が、私たちの個々の投資期間において満足のいく上昇を遂げてくれる保証はない。
特に、中央銀行が株式ETFを買い入れ、目先の株価を押し上げているならなおさらだ。
また、可能性こそ低いだろうが、米国株が日本化する確率もゼロではない。

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以上は弊サイトの読者ならお馴染みのことだろう。
しかし、本書にはそうした読者にも新鮮な部分がある。
それは第18-19章で論じられている「アセットアロケーション」だ。
あまりネタバレになってもよくないので、興味のある読者は本書にあたってほしい。