【書評】中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年

バブル崩壊と金融危機からの教訓

また、続いて起こったバブル崩壊と金融危機から得られた教訓はこうだ。

  • バブル崩壊後は長期間、低成長が続くことになる。
  • 金融システムの不安定化が経済に与える悪影響は大きく、政府・中央銀行はどんなことをしても金融システム安定を維持しなければいけない。
  • 中央銀行は経済の本質的な問題を認識し、説明し、理解を得るようにしなければいけない。

バブル崩壊後、日本の金融システムはだらだらと調整過程を引きずった。
日経平均は1989年末のピークを境に下落に転じていたが、主要行への公的資金注入が実現したのは1999年だ。
責任論・モラルハザードなどの点から、政治も銀行も決着を先延ばしし、結果的に《失われた10年》を浪費することになった。
誰かが、早いうちに早期決着の必要性を社会に認識させる必要があったのだ。
そのための最高の知性を備えた集団は、政治家や官僚ではなく、日銀であったということだろう。

主流派経済学の欠陥

この本の底流には、主流派経済学やそれが生んだ「グローバル・スタンダード」についての1つの見解が存在するように感じる。
それらは、白川総裁(当時)の政策運営の大きな阻害要因となった。

主流派経済理論は、金融の役割をなぜ軽視したのだろうか。・・・
ひとつの原因は、多くの経済学者がもっぱら米国経済を念頭に経済理論を作ってきたことに求められる。・・・
米国で金融危機が起こらない限りは、北欧や日本で金融危機が起こっていても、その現象を分析するインセンティブがあまり働かなかったのではないだろうか。

「グローバル・スタンダード」と呼ばれる主流派経済学が米ローカル経済ばかりを対象としてきたことは、ノーベル経済学賞に占める米学者の多さでわかる。
主流派経済学は、米経済をしばしば小規模開放経済とさえ仮定することがある。
金融経済が実体経済を凌駕しようという米経済において、主流派経済学は、金融機関をたかだか《摩擦》としか考えてこなかった。
こうしたマクロ・モデルに対する批判が最近高まっている。
債務サイクルをメカニズムの中心に置き、金融危機が繰り返すことを認識すべきとはレイ・ダリオ氏だ。

(次ページ: グローバル・スタンダードでは日本のデフレは問題でなかった?)

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