【休憩】ええ? 10月から床屋代が倍に??

先日、ちょっと驚くことがあった。
この10月1日から行きつけの1,000円床屋が2,000円に価格改定するというのだ。

もうこの床屋に20年近くお世話になってきた。
どのスタッフも腕がよいと感じたからだ。
始めてお世話になった時、この床屋は有名チェーンのFCで、代金は税込み1,000円だった。
消費税率は5%だった。
その後、消費税率は8%に上がったが、9月まで税込み1,000円を続けてきた。
近隣の1,000円床屋が8%の消費税を転嫁して税込み1,080円とする中でも、税込み1,000円を通してきた。
それが、10%への増税を機会に税込み2,000円に価格を改定するという。

2,000円の中身は「カット+スタイリング」だという。
単なる値上げでは顧客の理解が得られにくいと考え、付加価値をつけつつ価格をマークアップしたという趣旨だろう。
人気店だったから価格改定でも残る顧客は残るだろう。
しかし、値段で選んでいた人たちが離れていくのは避けられない。
(常連からすれば、少々店が空いてくれる方がいいという本音もある。)
この価格改定はプラスと出るか、マイナスと出るか。
そして、近隣の1,080円床屋にはどういう影響を与えるだろうか。
ライバルにとっても増税分の転嫁以上に価格改定するいいチャンスだからだ。

筆者は以前からこの床屋について、ここまで低価格でなくてもいいのではと感じていた。
何しろスタッフの腕がいい。
若いスタッフがきびきびといい仕事をしている印象があった。
それでも、この店は私が知る限りでも20年弱、税込み価格を据え置いた、つまり増税分を値下げさえしたのだ。
まさにデフレ/ディスインフレ社会を感じさせる現象だった。

「カット+スタイリング」の「スタイリング」のコストはそれほど大きいものではなかろう。
整髪剤を使うといっても1人あたりにそう大量に使うものでもないだろうし、スタイリングにかかる時間はカットと比べればそう多くはないだろう。
レストランで言えば、カットが料理でスタイリングはドリンクといったところか。
ちゃんと儲けてくれることを祈りたい。
職人の取り分が多くなるならそれは喜ばしいことだ。
これがインフレの明るい面である。

一方、利用者からすれば、出来上がりの価格が倍になるのはやはり痛い。
価格が適正水準まで上昇することは甘受するにしても、倍となるとなかなか適正とは即断できない。
中にはスタイリングを望まない利用者もいるだろうから、そういう利用者からすれば、自分が望む事業モデルの床屋が1件減ってしまったと嘆くのだろう。
スタイリングを望まない利用者が他に便利な選択肢がないという理由でこの床屋を使い続けるとすれば、それは1回1,000円の損失と感じるのかもしれない。
これがインフレの暗い面だ。

価格のマークアップが全体として明るいものになるか、暗いものになるかは、マークアップとともに増やされる付加価値による。
何も付加価値を増やさないで値上げをしてももちろん明るい面はあるが、全体としては暗い面でオフセットされてしまう。
その上、数量減によって全体のパイを減らしてしまうかもしれない。
一方、付加価値を増やしてマークアップをして、その付加価値を顧客が喜ぶなら、暗い面は少なく、数量減も少なくて済むかもしれない。
その場合、コストをなるべく抑えつつ顧客の感じる付加価値(会計上の付加価値ではない)をどう増やすかが課題になる。

すでに顧客満足度の高い日本企業が、さらに顧客が喜ぶような付加価値向上策を講じるのは容易ではない。
しかし、日本社会があくまでインフレを望むのなら、ゼロサム・ゲームにならないような道を模索してほしいものだ。