株高が投資家の悩みを深くする – 国別経済データ

株価は不安の壁を登るとはよく言ったものだ。
今、株高を素直に喜んでいる人は、果たして賢明なる投資家と言えようか。

現在の株高の背中を押している一因がインフレだろう。
インフレが高くなければ、あるいは高まる心配がなければ、市場の先行きに不安がある場合、現金・預金・債券で待機すればよい。
しかし、インフレ環境になると、こうした待機資金にペナルティが課されてしまう。
だから、穏やかなインフレへのヘッジに役立つかもしれない株を考えることになる。

しかし、それでも景気後退となれば、株が下がるかもしれない。
いっそ海外資産に振り分けようか。
しかし、景気後退となれば、いつもように円高になるかもしれない。
今は、円を売って外貨を買うタイミングだろうか。

目先の効く投資家なら、こんな風に悩んでいるのではないか。

何が正解かはわからないが、長期投資ならば、短期的な円高到来を過度に警戒すべきではないかもしれない。
要は、長い目で見て円より有望な通貨、国内資産より有望な海外資産を探すということだろう。
では、どの国に目を向ければよいのか。
IMFによる経済データ(実績・予想)から、5つだけ紹介しよう。
(今年4月に公表されたものだが、目まぐるしく変わる環境の中ですでに少し陳腐化しているかもしれないので注意いただきたい。)

まずはインフレ。
海外に投資をして、現地通貨でリターンが上がっても、通貨の価値が減価しては元も子もない。

CPI上昇率(年末、%)
CPI上昇率(年末、%)

率直な感想として、IMF予想の楽観ぶりに驚かれるのではないか。
先進各国で速やかにほぼインフレ目標に収束するように予想されている。
スポンサー想いの愛すべき国際機関とでも言うべきだろうか。

IMFのインフレ予想を確信できない投資家には、各国通貨の人気の要因となりうる指標をお見せしたい。

経常収支(%GDP)
経常収支(%GDP)

日本の頼みの綱が経常黒字だ。
第一次所得収支に依存しているとクエスチョンマークを付けられているが、黒字は黒字。
一方、多くの人が愛する米国は赤字が続くとの見方が動かない。

では、通貨の信認に影響を与えるかもしれない財政状況を見てみよう。

財政収支(%GDP)
財政収支(%GDP)

米国は経常収支と合わせて今後も双子の赤字を続けていくと見られる。
これが投資家の悩みのタネだ。
米国への投資は過去と同様有望であり続けると言えるだろうか。

政府純債務(%GDP)
政府純債務(%GDP)

ストックで見ても米国の政府債務は増え、今後も増大すると予想されている。
仮に予想に反して財政再建に転じれば、経済成長を抑制するかもしれない。
米ドルにとってはあまり明るい話ではないだろう。
もっとも、日本も他人事とはいえないだろうが。

最後に、こうしたネガティブな面を跳ね返してくれるかもしれないデータだ。

実質GDP成長率(%)
実質GDP成長率(%)

実質GDPなので、インフレはネットされていることになっている。
ただし、通貨の価値はインフレ以外でも低下しうるので、注意は必要だ。
(実際、日本円はディスインフレの中でどんどん安くなってきた。)