【輪郭】2026年 3つのシナリオ

もう1つのシナリオは、インフレ的シナリオだ。

シナリオ3)インフレ時代の市場の足踏み

すでにデフレ的な急落の段階は(おそらくリーマン危機で)終わり、パンデミックを経て通貨膨張とインフレの時代に入っているとするシナリオである。
この場合は、データが残っている1970年代が参考になる。
デフレ的な急落がニフティフィフティ・バブル崩壊であり、今はその後の段階にあるとの見立てになる。
これについてはFPでレビューしている。

このシナリオの特徴は、株式の低迷が名目ベースでなく実質ベースで起こっているという点だ。
ニフティフィフティ・バブルの崩壊では確かに株価は大きく下げている。
しかし、その後は株価はインフレ進行とともに上昇基調にある。
インフレ時代には少なくとも名目ベースでは株価は上昇する傾向がある。
ただし、名目株価の上昇が緩やかだと、インフレに勝てないことがある。
1970年代には、バブル崩壊で名目株価・実質株価が急落した後、名目株価は上昇したが、実質株価は低迷を続けたのである。

ここで注意したいのは、株式が低迷するかもしれないからといって、安易に現預金や債券に逃げないことだ。
仮にインフレが高止まり・再加速するなら、現預金や名目債は確実に被害を受ける。
インフレの程度によるのだが、株式の方が有利である場合もあり、1970年代がまさにそうだった。

ギャンブルか分散か?

繰り返しになるが、ここに述べた3つのシナリオは予想ではない。
考えるためのヒントだ。
それぞれのシナリオにおいて、どういった資産に投資すべきかを考えるとよい。

筆者の場合は1つのシナリオに決め打ちはしない。
3つのシナリオ(場合によってはすべて外れる場合)について何に投資したいかを考え、どれになっても大外ししないように心がけている。

1)ならば、株がいいだろう。
2)ならば、債券(待機場所)も持っておくべきだろう。
3)ならば、株やコモディティ(資源)関連だろう。

などと考えていけばよいと思う。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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