【Wonkish】ヘッジコストが円高圧力に?

Q4. ヘッジ付き米10年債投資の巻き戻しの影響

日米の長期金利差が2.35%だとして、ヘッジ・コストがこれより小さいならヘッジ付き米10年債投資を考えうることになる。
最近のBloomberg記事によれば

「このコストを加味した10年物の米国債利回りは15日に一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の0.24%と、1年余りで最も低い水準となった。
2016年半ばにもヘッジコストが上昇し、米国の金利低下もあって邦人投資家にとって利回りがマイナスになった。
この結果、日本の投資家は同年8?12月、5カ月連続で米国債を売り越した。」

今回もヘッジ付きリターンがマイナスに転じれば、当然、国内投資家はポジションを閉じるだろう。
ただし、元々ヘッジ付きだったから、債券ロングと為替ヘッジを同時に終わる分にはドル円には影響しない。
問題はそのヘッジ付きではなく、ヘッジなしの投資がどうなるかだ。

Q5. ヘッジなし米10年債投資への影響

そこで問題になるのが、ジャパン・プレミアムが為替レートだけの話ではない点だ。
資金需給要因があろうと、国内投資家(簡単のため邦銀と考えればよい)の接する日米の金利と直先スプレッドの間には金利パリティが成立している。
(さもなくば裁定取引が発生する。)
つまり、国内投資家が支払わなければならないドル金利にはジャパン・プレミアムが乗っている。
直先スプレッドへのインプライド金利だけでなく、その他のドル短期金利でもこの要因が乗っている。
それは当然、長期金利にも影響を及ぼす。

国内投資家がドル資金を取る時にジャパン・プレミアムを乗せられてしまうのは困りものだ。
そこで、日銀は米ドル資金供給オペを実施しているが、それでもなくならない。
国内投資家がドルの資本コストを高く認識するなら、対米投資にしり込みをしてしまうだろう。
これがポート・フォリオリバランスを阻害する。
結果は、ヘッジなし米債投資の減少であり、円投ドル転の減少が為替市場に及ぼす影響はいわずもがなだろう。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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