【輪郭】日銀が円高の火を消せないわけ

日銀の隘路は続く

だから、2%物価目標が未達でも金融政策がありうるのではないかとの観測が強まっている。
その場合の条件は、為替が円高に振れないことだ。
つまり、欧米の金利が上昇したり、欧米の経常収支が改善したりすることだ。
いつまでも外需中心にしか経済政策を考えられない日本には海外だのみのシナリオしか描けない。

米国について言うなら、減税によって財政悪化・貿易赤字拡大が見込まれる。
これは長い目で見ればドル安要因であろう。
米金利上昇を好景気によるものと説明する人は多いが、それでも現実にはドル安が進んできた。
双子の赤字拡大というドル安要因があり、そこに大統領のツイートがカタリストとして働けば、金利差とは関係なく円高ドル安が続く。
その流れが断ち切れなければ、日銀の金融政策正常化は見込みにくい。

その時は突然やって来る

個人的には、日銀の金融政策正常化の引き金を引くのは、突然のリバーサル・レートの発見にあると予想している。
黒田総裁は現状、金融緩和の副作用が問題にはなっていないと強弁している。
しかし、そうした副作用は突如として顕在化することがある。
銀行の経営不振、一部銀行が貸し込んでいた事業者・銀行以外の金融機関(含むノンバンク)の破綻などである。
今でこそ副作用の大きさは計測できないが、そうした事象が起こればすぐにその大きさが身に染みるようになる。

そうなれば
《ああ、リバーサル・レートは今より上方にあったんだ》
と思い知らされることになる。


山田泰史山田 泰史
横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部化学科卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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