アスワス・ダモダラン教授のデフォルト時代のリスクフリー金利講座

フィッチが米国の外貨建て長期債を格下げした時、弊社の細かすぎる心配を紹介したことがあった。
これと似た心配をアスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が緻密に解説している。

すべてのファイナンス授業の基礎にはリスクフリー投資の考えがあり、国債金利をリスクフリー金利の代理に用いている。
その金利がすべてのモデルの主たる入力値なのに、政府がデフォルト・フリーでなくなったらどうなるのか?

ダモダラン教授がツイートした。
教授はこのツイートに先立ちブログを更新し、一連のツイートはそのハイライトを紹介する形で投稿されている。
弊社記事と同様、重要だが細かすぎる議論が満載だ。

ツイートからいくつか紹介しよう。

「国債金利をリスクフリー金利として用いるのは、政府が通貨発行を統制しており、現地通貨建て負債についてデフォルトしないと信頼できるとの前提の上に成立している。・・・
国家は経済的理由でデフォルトするかもしれないが、デフォルトは経済的行為であるのと同じくらい政治的行為だ。
米国のデフォルト・リスクという概念は、経済的行為より政治的行為によるところが大きかった。」

ダモダラン教授は、経済的理由からデフォルトに陥る場合、その解決がより難しくなると説明する。
経済的理由とは、本当に返せない場合を指すからだ。
政治的理由(例:米国の債務上限問題を巡る駆け引き)の場合は、経済的理由より回避が用意だという。

ダモダラン教授は、世界的にリスクフリーだった経済主体への信頼が揺らいでいると考えている。

「2008年の危機によって加速した制度への信頼の欠如は多くの結果をもたらした。
政府への信頼が下がるほど、リスクフリーという考えも侵食された。
近いうちにリスクフリーのものが何もなくなる可能性も存在する。」

米国がAAAでなくなり、格付3会社からAAA(Aaa)を受けるのは9か国になった。
それもまた減っていく可能性が高いと見ているのである。

ダモダラン教授はブログ記事の最後で重要なメッセージを残している。

(中央銀行を含め)ファンダメンタルズに抗えるものはいない:
中央銀行や政府は政策によって金利を上げ下げする力があると考えている。
その前提で投資している投資家は幻想を見ているのだ。
中銀・政府は限界部分で金利をナッジすることはできるが、ファンダメンタルズ(インフレや実質成長)には抗えない。
そうしても、ファンダメンタルズが勝利するだろう。

かつてベン・バーナンキ元FRB議長が語った言葉が思い出される。
FRBがどんどん利下げをしたことで米金利が低下したとの批判に対し、バーナンキ氏は反論した。
政策金利は市場金利に寄り添っているだけであり、金利は基本的には経済・市場が決めている、との趣旨だった。
金利が低下したのはインフレや潜在成長率が低下したからとの主張である。

裏を返せば、リスクフリー金利も、それにデフォルト・リスクを加味した国債利回りも、ファンダメンタルズにより上昇すれば(限界部分を超えて)抑えつけることは難しいという話だろう。