【書評】40兆円の男たち 神になった天才マネジャーたちの素顔と投資法

米CNBCプロデューサー マニート・アフジャが書いた著名ヘッジ・ファンド・マネージャーの本。

ヘッジ・ファンドという業界は悪口を言われるわりに、その中身がよく知られていない。
そもそも、ヘッジ・ファンドは、定義さえ定まっていないようなところがある。
そうした不可解な業界の生態を垣間見させてくれる本だ。

本書では著名なファンド・マネージャーを取り上げている。
自然と、腰の据わった運用方針のファンドが多くなっている。
いくつかは、このコラムでもお馴染みの名前だ。

  • レイ・ダリオ (ブリッジウォーター)
  • ピエール・ラグランジュ (マン・グループ)とティム・ウォン (AHL)
  • ジョン・ポールソン (ポールソン & Co.)
  • マーク・ラスリーとソニア・ガードナー (アベニュー)
  • デビッド・テッパー (アパルーサ)
  • ウィリアム・アックマン (パーシング・スクエア)
  • ダニエル・ローブ (サード・ポイント)
  • ジェームズ・チェイノス (キニコス)
  • ボアズ・ワインシュタイン (サバ)

こうした花形マネージャーらの学生時代からキャリアまでをドラマチックに描いている。
日本の普通の金融マン、投資家からするとやや遠い話に聞こえるが、それでも刺激的だ、

この本の主題はヘッジ・ファンドなのだが、筆者が引き込まれたのは扉に書かれた引用だ。
ウォーレン・バフェット氏の言葉:

(アイザック・ニュートンの)天才ぶりは投資には発揮されず、南海泡沫事件では大金を失った。
これについてニュートンは後に
『私は星の動きを計算することならできるが、人間の狂気を計算することはできない』
と説明している。
ニュートンがこの損失によって精神的ダメージを受けることがなければ、
『運動量が増えれば増えるほど投資家のリターンは減る』
という第四の法則が発見されていたかもしれない

オマハの賢人 バフェット氏は、ヘッジ・ファンドと対極にあるような投資スタイルのように思える。
『運動量が増えれば・・・』というくだりは、短期売買より長期投資を選好する信念を表している。
この信念でバフェット氏は稀有な成功を収めてきた。
しかし、運動量を(ある程度)増やしても成功を収めたヘッジ・ファンドは存在する。

バフェット氏も成功したヘッジ・ファンドも、根源的価値と乖離した市場価格に着目して投資を行う。
そうしたヘッジ・ファンドはきっと「人間の狂気を計算すること」に成功したのではないだろうか。