【書評】シフト&ショック 次なる金融危機をいかに防ぐか

不均衡の功罪

リーマン危機では何が起こったのか。
それに対するいくつかの説明をウルフ氏は挙げている。
その一番手が

世界規模で貯蓄過剰が発生し、グローバル・インバランスが拡大した。

である。
各国の経済の結びつきが強くなるにつれ、国家間の不均衡も拡大していった。
ブロック化を遂げたユーロ圏ではこうした不均衡はなおさら大きくなる。
ドイツが勝ち、PIIGSが負ける構図である。

では、この不均衡は悪いことなのか。
そもそも、こうした不均衡は国際分業が進むに連れて必然的に起こるものだ。
だから、不均衡がすべて悪いというわけではない。
いかなる不均衡も許さないというなら、経済のブロック化など考えない方がいい。
重要なのは、一定の不均衡を許しながら、それが自然と調整されるような調整弁を設けておくことだ。
為替レートがその代表的なものだが、通貨を統合したならそれは使えない。
結果、何らかの財政統合が必要となるはずだ。

ユーロ圏のゆくえ

ウルフ氏はユーロ圏が解体するようなことになれば皆が損をするといい

債権国は債務国以上に大きなダメージを受けることになるはずだ。

と分析している。
これが示唆するところは重い。
単にドイツが通貨統合の恩恵を受けてきたというだけではない。
ギリシャがユーロ圏から離脱(Grexit)すれば、失うものもなくなる。
結果、心置きなくデフォルトを選択するというようなことも考えられる。
その次には、スコットランドやカタルーニャなど豊かな側からも独立を求める声が強まろう。

この他にも、財政拡大vs緊縮、財政ファイナンスをうまく活用する方法など、興味深い論点がぎっしりとつまっている。