【書評】平成の経済(小峰隆夫著)

本書は、経済企画庁調査局長などを歴任した小峰隆夫 大正大学教授が、令和を迎える直前の4月に上梓した平成経済史。
バブルの発生からアベノミクスまでをコンパクトに、それでいて精緻に解説している。

(amazon)平成の経済

小峰教授は本書を単なる記録にとどめるつもりはなかったという。
「後世の参考に」なるよう「できるだけ政策的教訓を導」くよう努めたと書いている。
そのためには「自分の価値判断が含まれることは避けがたい」とし、「率直に自分の考えを前面に出」したという。
だからと言って、ハト派の読者が敬遠するほどのものではない。
もちろん異論はあろうが、ハト派の読者にも十分読める内容になっている。

平成の30年で起こった経済的に重要なイベント・議論が丁寧に説明されている。
事実の列挙の部分は読みやすく、逆にその解釈の部分は難敵だ。
解釈が示されているページは、1ページの中で数回も賛成・反対を感じさせる内容になっている。
すべてに賛成する人ばかりではないだろう。
賛成できない人、すんなり理解できない人は、そのたびに読書を中断することになる。
ある意味で読むのに骨の折れる本だが、それもまた思考を促すいい動機付けになるのだと思う。

投資家にとってはどんな読み物になるのだろう。
小峰教授はいくつか「断片的な感慨」を書いており、そのうちの2つがバブルにかかわるものになっている。

(1) バブルの中にあってはそれがバブルだとはわからない
日本の1980年代後半のバブル、米国の2000年代の住宅バブルも、その当時にはバブルとする議論は少なかったと、小峰教授は指摘する。
現在の未曽有の低金利の世界がバブルでないと誰が言えるのだろう、そう考える人がいてもいいのかもしれない。

(3) バブルの後には必ず『バランスシート調整問題』など金融面での大きな弊害が現れる
当然のことながら、バランスシート調整とは(全体としては)投資家に損失を与えるものであり、資産デフレをもたらすものだ。
デフレを防ぎたいならバブルを生まないことが理想だが、それは可能だろうか。

その未然防止は弊害が最後まで世に出ないままに問題が処理されてしまうため、その成果を評価することは非常に難しいという宿命がある。

バブルを未然に防止するためにタカ派的な政策をとった結果、バブルが起こらなかったとしても、誰も褒めてはくれない。
一方で、バブルを生み出すような政策をとった場合、短期的にはバブルでみんないい気持ちになるから、政治家・役人・日銀は褒めてもらえる。
だから、財政は悪化しやすく、金利は下がりやすく、バブルが生まれやすい。