現金はゴミか?(2)本当の問題はやはり日本円。J-REITは使えるか?

(1)では米ドルの待機資金をどこに置いておけばよいかを考えた。
しかし、本当に悩ましいのはやはり日本円の待機資金をどこにおくかだろう。

米ドルならば、短期・長期ともに名目金利が期待インフレ率を上回っている。
つまり実質金利がプラス。
だから、MMFに置いていても価値の毀損は一応心配しないで済む。
(ただし、円へ換算する場合なら目減りする可能性はある。)
また、実質金利がプラスだから、米物価連動国債(TIPS)、より具体的にはTIPSのETFも活用可能かもしれない。

金融抑圧の中での待機資金の置き場

日本の場合ははるかに深刻だ。
足下5月のCPI前年比は総合+3.5%、コアコア+3.3%。
これを上回る低リスクの万人向け短期運用があるとすれば、それは金融詐欺だけだろう。
日本は短期ホライズンで見れば、いまだに深い金融抑圧の状態にある。
待機資金を短期の現預金・債券にしておけば、毎年3%前後またはそれ以上インフレで減価していくのである。

この逆側では、政府の債務負担が軽減している。
これは喜ばしいことかもしれないが、一市民としては安穏としていられない。
何しろ預金者側のマイナス3%は確定利回りに近い意味合いがある。
何もしなければ、年3%やられてしまう。
貨幣錯覚に甘えている場合ではない。

物価連動債利回りはまだ水面下

では、どうすればよいか。
米国のように物価連動債は選択肢に入るだろうか。
いやいや、日本の物価連動債の利回りはいまだマイナス圏。
物価連動債の投資信託に投資しても、実質ベースで利益を得るところまでは期待できないだろう。

日本の物価連動債の流通利回り
日本の物価連動債の流通利回り

ただし、明るい兆しも見える。
日銀の金融政策正常化のおかげで、長期ゾーンを中心にかなり実質ベースのマイナス金利が解消してきた。
利上げや量的引き締めが進んだり、物価が低下してくれば、日本でも物価連動債が魅力を発揮するようになるかもしれない。
一方で、まだ中期ゾーンで利回りがマイナスに沈んでいるのは厄介だ。
デュレーションが長い商品は、本稿で検討している待機資金としては使いずらい。
(引き締め等で)さらに実質金利が上昇した時にキャピタル・ロスが出るのでは手が出しづらいからだ。

もう1つ言い添えると、リーマン危機時、物価連動債利回りは急騰(価格は急落)した。
物価連動債はインフレへのヘッジであり、デフレ的なショックに見舞われると価格が急落するものなのだ。
(ただし、現行の銘柄ではフロアが付いているので、下限もある。)
この先、日本がデフレに戻ると思うなら、このリスクも考えないといけない。

(次ページ: J-REITは待機場所になりうるか?)