【書評】日本経済「最後の選択」

アベノミクス後の予想未来図

最後に伊藤教授が描く近い将来を紹介しよう。

2013年度末で、10年物新発国債金利が現在は約0.5%、既発国債の平均金利が1.15%であった。
アベノミクス成功後に達成させるとしている経済的均衡状態(インフレ率2%、実質成長率2%)のもとでは、10年物金利は3%程度になるのだろう。
・・・数年の猶予があるが、3%台の金利は、利払い費が2014年度予算での10兆円から30兆円規模に膨らむことを意味している。

ここから3つの点を指摘したい。

  • 単年度20兆円の捻出
    今後、税収が増える可能性は十分にあるし、歳出面の見直しも行われるだろう。
    しかし、20兆円はやはり厳しい数字だ。
  • 金融抑制が続く
    インフレ率2%、実質成長率2%、長期金利3%と想定されている。
    このインフレ率と実質成長率なら、4%が最も自然な想定値であるはずだ。
    それを3%とするには、日銀が引き続き10年もの実質金利を1%に抑え込むことを意味している。
    スティグリッツの定義に従えば、金融抑圧ではないが金融抑制が続くということになる。
    これは、言うまでもないが、経済実勢より低い金利によると富の移転が継続するということだ。
  • 乖離のある「均衡水準」
    みんなが未来の姿にちぐはぐとしたものを感じているのではないか。
    伊藤教授は2% + 2%の均衡水準を論じていながら、3%を予想した。
    4%では、日本財政が持たない可能性が高まりすぎるからではないか。
    「均衡」でありながら、乖離が残っている。
    みんな自己矛盾のない将来像を描けないでいる。

いずれも厳密な意見ではない。
トレーダー的な目の子計算にすぎない。
しかし、こうした議論は意外とよく当たる。