【書評】世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠

えせ経済学に支えられたTPP

スティグリッツ教授は、TPP擁護者の基盤を「えせ経済理論」と批判し

「えせ」がいまだにはびこる主因は、富裕層の利益に合致するから

と説明する。
なぜ「えせ」なのか。
一つは自由貿易論の前提が成り立たない状況があるからだ。
その前提とは「労働者は職と職のあいだを途切れなく移動できる」というもの。
低賃金の職なら可能かもしれないが、中所得以上のフルタイム職ではありそうにない前提だ。
米国でも日本でも失業率こそ下がっても賃金は伸びない。
失業率低下は、非正規雇用の拡大によって実現し、それが賃金の伸びを抑え込んでいる。

目的を見失った経済政策

それでも自由貿易によって全体のパイは大きくなるのかもしれない。
しかし、労働者が潤わず、全体が潤うとすれば、自由貿易は誰のためのものか。
同様のことは通貨安政策についても言えることだ。

こうした議論が完全に公平なものとは必ずしも思わないが、忘れてはならない重要な視点だろう。
賃金上昇が経済を押し上げるかどうかという問題ではない。
経済政策の目的がどこにあるかという問題だ。

最後にスティグリッツ教授は2つの点を強調する。

  • 米国の格差拡大は政策・計画・法律の結果であり、これらを精査すべきだ。
  • 「”トリクルダウン”効果は神話にすぎない。」

あらためてTPP批准は厄介な仕事だと思えてくる。
逆にすんなり決まるなら、そうした国の将来は危うい。