【書評】高橋是清と井上準之助 – インフレか、デフレか

昭和初期の不況期、今と同じように財政規律と金融緩和で揺れた時期がある。
その時期の緊縮派:井上、緩和派:高橋の動きを描いた本。

結果から言えば、高橋是清の金融緩和・財政支出拡大が経済を回復させた。
井上準之助が蔵相の時にぶち上げた「金解禁」は経済を悪化させた。
金解禁はデフレを生み、株安を誘発した。

では高橋是清が絶対的に正しかったのか。
もちろん、そうでもない。
高橋のマネタイゼーションは軍事資産の拡大を可能にし、結果として軍部の暴走を可能にしてしまった。
お金をつけた高橋も、拒んだ井上も、いずれも凶弾に倒れたのが当時という時代を感じさせる。

現在、日銀総裁自身が示唆するように、日銀は財政ファイナンスの領域に足を踏み入れている。
昭和初期が今回も当てはまるとすれば、財政ファイナンスが正解となる。
しかし、現在と昭和初期を同列に語ってよいという保証はどこにもない。

一つ言うならば、
 仮に財政ファイナンスが正しい選択だったとしても
 その資金が何に使われるかが重要だ
ということではないか。
 国債を買い入れるなら、国はそれを何に使うのか
 社債・株式を買い入れるならば、企業はそれを何に使うのか
ここまでの責任を日銀に負わせるのはあまりにも酷だ。

現在の日本の政治は与党も野党も最低・最悪。
このことをもって、これ以上悪くならない、という人もいる。
逆に、政治がだめだから、経済はどんどん悪くなる、という人もいる。
前者であることを祈ろう。